cerebrovascular
脳血管センター
地域の先生方と綿密な連携をとり 患者ニーズに応えられる診療を心掛けております
脳血管内治療(手術)とは
脳血管内治療とは頭部を切り開く事なく、足の付け根や肘、手首などの血管から挿入した、カテーテルと言われる細い管を用いて手術を行う治療法です。対象となる疾患は主に、脳梗塞や脳出血の原因となる様々な脳血管疾患、一部の脳腫瘍などです。開頭術と比べて患者様の身体への負担が小さく、術後短期間で退院・社会復帰が出来るというメリットがあります。また、開頭術のリスクを低下させる目的で補助的治療として脳血管内治療を行う場合もあります。
開頭術とは違った知識と技術が必要な専門性の高い治療であり、担当する医師には高い技術力が要求される治療です。
当院の脳血管内治療センターについて
当院ではこれまで多くの脳神経外科手術を行って参りました。その豊富な経験から脳血管内治療の方が効果的であると判断した場合に積極的に脳血管内治療を行っております。数ある脳神経外科手術の中で脳血管内治療に特化した豊富な経験を持つ脳血管内治療専従医を中心として症例毎に慎重な検討を重ね治療方針を決定しております。従って、基本的には患者様の希望に沿った治療を心がけておりますが、脳血管内治療を希望された場合でも開頭術が望ましいと判断した際には開頭術をお勧めさせて頂く事もあります。また、低侵襲であるとはいえ手術である以上、合併症の可能性は0%ではありません。例えば未破裂脳動脈瘤に対する脳血管内治療の場合、一般的に合併症の可能性は3〜5%と開頭術とほぼ同等であると言われておりますが、我々は少しでも合併症の可能性を下げるために日々努力しております。いずれにしても治療方針については術前に充分に納得して頂けるようにご説明させて頂きます。
近年、脳血管内治療に使用するデバイス(機器)の進化に伴いその適応は広がってきておりますので、脳血管疾患と診断された場合には一度当院の脳血管内治療専門外来を受診して下さい。
脳血管内治療で治療可能な疾患
1)脳動脈瘤
未破裂脳動脈瘤は脳ドックや頭痛、めまいなどの精査目的で行った頭部MRI・MRA検査で偶然に発見される事の多い疾患です。多くの場合は脳動脈瘤による症状はありませんが、時には周囲の脳や神経を圧迫するほど大きくなり複視(物が二重に見える)やふらつきなどの症状を有する場合もあります。破裂しくも膜下出血を発症する未破裂脳動脈瘤は一部であり、多くの脳動脈瘤は生涯破裂することが無いのですが、残念ながら現状では具体的にどの未破裂脳動脈瘤が将来破裂に至るのかを判断する術はありません。未破裂脳動脈瘤治療ガイドラインでは5mm以上の大きさのものや形が歪なものなどが治療適応とされております。当院ではその他、脳動脈瘤の部位、患者様のご年齢などを個別に検討し、さらには患者様・ご家族の希望も考慮した上で治療適応の判断をしております。治療適応と判断した場合、治療方法として脳血管内治療と開頭クリッピング術のいずれかを行うという事になりますが、これは脳動脈瘤の部位、大きさ、形状、周囲血管や神経との位置関係などを総合的に判断して決定します。どちらの手術でも治療が可能な脳動脈瘤の場合には双方の利点、欠点をご説明の上、患者様と相談して決定致します。
破裂脳動脈瘤は未破裂脳動脈瘤が不幸にして破裂してしまいくも膜下出血を発症している状態の脳動脈瘤です。多くは救急搬送となりますが、来院時には一旦自然に止血されている事がほとんどです。放置した場合には高い確率で再破裂してしまうため、手術の目的は脳動脈瘤の再破裂予防となります。この場合も脳動脈瘤の部位や形状、大きさなどから開頭術か血管内治療かを判断し、緊急で手術を行います。
血管内手術は、全身麻酔でレントゲン透視下にマイクロカテーテルと呼ばれる先端径が1mmに満たない管を脳動脈瘤内に送り込み行います。プラチナで出来たコイルを動脈瘤内に充填していき、造影剤で脳動脈瘤が写らなくなれば終了です。脳動脈瘤の頸部が広くコイルが安定しない場合には風船の付いたバルーンカテーテルやステントと呼ばれる金属でできたメッシュ状の筒を併用してコイルが母血管に逸脱しないようにします。手術の前後には術中に血栓が過剰に形成されるのを予防する目的で抗血小板剤の内服をして頂きますが、ステントを併用した場合には術後長期間(1〜2年)の内服継続が必要になります。
脳血管内治療が開頭術に勝る点は、開頭が必要でないため低侵襲で術後の体力回復が早く、経過に問題が無ければ早期退院・社会復帰(術後4〜5日で退院、すぐに仕事復帰)が可能であること、開頭術では到達が困難な深部の脳動脈瘤でも到達可能であること、であり、開頭術より劣る点は、脳動脈瘤の入り口を完全に閉鎖する治療では無いために術後の脳動脈瘤再発・再治療の可能性が開頭術に比べて高いこと、であります。術後の再治療の可能性は8〜10%程度あると言われていますが近年のデバイス(コイルやステント)の進化にともなってコイルの充填率は上がっており再治療の可能性は低下してきている印象です。
2)脳動静脈奇形(AVM)
脳組織を栄養する動脈と静脈の間にナイダスと呼ばれる異常な血管の塊を形成する病気を脳動静脈奇形(AVM)と言います。胎児期の血管形成時に起こる異常であり生まれつき持っている先天性疾患でありますが、成長に従ってAVMに流入する血流が増え、導出静脈の拡張や動脈瘤の形成などを伴い、時には脳内出血やけいれん発作などを起こします。無症状で発見されたものであれば治療は行わずに経過観察を行う事もありますが、当院では将来の脳出血を予防する目的で症例毎に治療リスクを検討して方針を決定しています。開頭術による摘出を行えれば根治可能な疾患ですが、摘出術を行う事で重篤な合併症が発生するリスクが高い場合などにはγナイフと呼ばれる放射線治療を選択する事もあります。AVMに対する脳血管内治療の役割は主に摘出術の前に手術時の出血を減らしたり術中の剥離操作を容易にさせる目的で行います。大きなAVMでは数回に分けて脳血管内治療を行い充分に塞栓が出来た時点で摘出術を行います。またγナイフ療法と組み合わせてその効果を最大限に発揮させる目的で脳血管内治療を行う事もあります。当院では国内トップクラスのAVMの症例数を誇っており、同時に行うAVM塞栓術もまた非常に豊富な治療経験を有しています。
塞栓術の方法は、全身麻酔でレントゲン透視下にマイクロカテーテルと呼ばれる先端径が1mmに満たない管をAVMの近傍まで送り込みプラチナ製のコイルや液体塞栓物質(NBCAやonyx)を用いて塞栓を行います。栄養血管の少ない小さなAVMでは一度の脳血管内治療で塞栓を終了しますが、複数の栄養血管を持つ大きなAVMでは一度に沢山の塞栓を行った場合、それまでAVMに流れていた血流が突然正常脳組織に再分布され、けいれん発作や脳出血を起こす事があるため、複数回にわけて塞栓を行います。使用する塞栓物質は主にonyxという液体塞栓物質です。これはマイクロカテーテルから体内に注入し血液に触れるとゆっくりと固まる性質を持つ物質で、使用するに当たって講習受講やonyx指導医の下での研修が義務付けられるなど熟練を要する物質ですが、当院では豊富な経験を持つonyx指導医の適切な判断の下に使用しております。
3)頸部、脳血管狭窄
脳梗塞の原因は様々ですが、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常、喫煙などを原因として頸部動脈、頭蓋内の比較的太い動脈の狭窄が進行し、脳梗塞を起こしてしまう事があります。治療の基本は基礎疾患の厳重な管理と抗血栓療法を基本とした内科的治療ですが、血管狭窄が高度である場合や内科的治療を行っても一時的な脳虚血症状を繰り返す場合には外科的治療の介入が必要となります。
頸部動脈の狭窄の場合、頸部を切開して血管を露出させ肥厚した血管内膜を切除する内膜剥離術(CEA)と、カテーテルを用いて狭窄部分をバルーンカテーテルで拡張させた後にステントを留置する経皮的頸動脈ステント留置術(CAS)があります。CASは局所麻酔で施行可能であり、頸部を切開する必要も無いため身体への負担の小さな治療ですが、肥厚した内膜は切除されないために再狭窄の可能性は少し高くなります。いずれの治療が患者様にとってより効果的であるかは慎重に検討した上で決定します。
頭蓋内血管の狭窄の場合も内科的治療が基本となります。しかし厳重な管理下で内科的治療を行っていても脳虚血症状を繰り返す場合にはバルーンカテーテルやステントを用いた経皮的脳血管形成術を行う事もあります。
4)超急性期脳血栓回収術
脳を栄養する比較的太い中枢側の脳主幹動脈(内頸動脈、中大脳動脈、椎骨動脈、脳底動脈など)が突然閉塞する事によって急激に症状(片側の手足の運動障害、ろれつが回らない、言葉が全く出ない、意識が悪いなど)が進行する脳梗塞の場合、発症からの時間や来院時の検査結果などから血栓溶解療法(rt-PA静注療法)や血栓回収術を行う事で急激な機能予後の改善を得られる場合があります。血栓回収術はその有効性から近年急速に普及してきている治療法で、当院でも積極的に取り組んでおります。対象となるのは重篤な神経症状を呈しておられるにもかかわらず、頭部CTやMRIなどの検査ではまだ広範囲の脳梗塞巣が確認できない方で脳主幹動脈に閉塞を認める患者様です。血栓溶解療法と血栓回収療法を同時に行う事も、それぞれを単独で行う事もあり、それは検査結果などから適切に判断されます。
救急来院され、症状や検査結果から血栓回収療法の適応と判断した場合には急いで血管撮影室に移動して血栓回収術を開始します。局所麻酔下に足の付け根の大腿動脈からカテーテルを血管内に挿入して閉塞部位にデバイス(血栓吸引用カテーテルや血栓回収用ステント)を誘導して血栓を回収し閉塞血管を再開通させます。約80%の確率で有効な再開通が得られます。脳組織が不可逆性のダメージを受ける前に血流を再開通させる事ができれば症状の劇的な改善が期待できますが、既に脳組織が不可逆性のダメージを受けている場合には血流が再開通しても症状が改善しない事もあります。脳組織は血流が途絶えると秒刻みでダメージが進行していきますので1分1秒でも早く治療を行う事が予後の改善に繋がります。
5)硬膜動静脈瘻
脳を包んでいる硬膜と呼ばれる膜上に動脈と静脈の間に瘻孔(シャント)を形成し、圧の高い動脈血が直接静脈内に流れ込むことによって様々な病態を引き起こす比較的稀な疾患です。原因は外傷、開頭術後、炎症、などが上げられていますが、原因不明の場合も多くあります。症状はシャントの形成部位や静脈に流れ込んだ動脈血の流れて行く方向によって多彩ですが、拍動性耳鳴(耳元でドンドンと心拍に一致した音が聞こえる)、眼球結膜の充血・浮腫、ひどくなると脳の静脈還流障害を引き起こし脳浮腫による認知障害などの様々な症状、けいれん、脳出血を起こす事もあります。治療は脳血管内治療でシャント部の閉鎖を行い静脈内に動脈血が流れ込むのを止めます。これもシャント部位や流れ込む血液の流出方向などによって様々な方法がありますが、多くは流入する動脈側と流出する静脈側にそれぞれカテーテルを留置してコイルや液体塞栓物質を用いてシャントの閉塞を目指します。シャント部位にカテーテルの留置が困難で根治的治療が出来ない場合には流入する血流量を下げるに留まる事もや、小さく開頭を行って直接シャント部位を穿刺して閉塞させる事もあります。
6)脳腫瘍
一部の血流豊富な脳腫瘍では摘出術時の出血量の減少を目的に摘出術前に腫瘍栄養血管の塞栓を行う事があります。多くは局所麻酔下に血管内治療を行いますが、腫瘍の存在部位によっては繊細なカテーテルの操作が要求されるために全身麻酔で行わせて頂く事もあります。塞栓物質はコイルや顆粒状の固形塞栓物質、液体塞栓物質を状況に応じて使い分けています。
脳血管内治療とは頭部を切り開く事なく、足の付け根や肘、手首などの血管から挿入した、カテーテルと言われる細い管を用いて手術を行う治療法です。対象となる疾患は主に、脳梗塞や脳出血の原因となる様々な脳血管疾患、一部の脳腫瘍などです。開頭術と比べて患者様の身体への負担が小さく、術後短期間で退院・社会復帰が出来るというメリットがあります。また、開頭術のリスクを低下させる目的で補助的治療として脳血管内治療を行う場合もあります。
開頭術とは違った知識と技術が必要な専門性の高い治療であり、担当する医師には高い技術力が要求される治療です。
当院の脳血管内治療センターについて
当院ではこれまで多くの脳神経外科手術を行って参りました。その豊富な経験から脳血管内治療の方が効果的であると判断した場合に積極的に脳血管内治療を行っております。数ある脳神経外科手術の中で脳血管内治療に特化した豊富な経験を持つ脳血管内治療専従医を中心として症例毎に慎重な検討を重ね治療方針を決定しております。従って、基本的には患者様の希望に沿った治療を心がけておりますが、脳血管内治療を希望された場合でも開頭術が望ましいと判断した際には開頭術をお勧めさせて頂く事もあります。また、低侵襲であるとはいえ手術である以上、合併症の可能性は0%ではありません。例えば未破裂脳動脈瘤に対する脳血管内治療の場合、一般的に合併症の可能性は3〜5%と開頭術とほぼ同等であると言われておりますが、我々は少しでも合併症の可能性を下げるために日々努力しております。いずれにしても治療方針については術前に充分に納得して頂けるようにご説明させて頂きます。
近年、脳血管内治療に使用するデバイス(機器)の進化に伴いその適応は広がってきておりますので、脳血管疾患と診断された場合には一度当院の脳血管内治療専門外来を受診して下さい。
脳血管内治療で治療可能な疾患
1)脳動脈瘤
未破裂脳動脈瘤は脳ドックや頭痛、めまいなどの精査目的で行った頭部MRI・MRA検査で偶然に発見される事の多い疾患です。多くの場合は脳動脈瘤による症状はありませんが、時には周囲の脳や神経を圧迫するほど大きくなり複視(物が二重に見える)やふらつきなどの症状を有する場合もあります。破裂しくも膜下出血を発症する未破裂脳動脈瘤は一部であり、多くの脳動脈瘤は生涯破裂することが無いのですが、残念ながら現状では具体的にどの未破裂脳動脈瘤が将来破裂に至るのかを判断する術はありません。未破裂脳動脈瘤治療ガイドラインでは5mm以上の大きさのものや形が歪なものなどが治療適応とされております。当院ではその他、脳動脈瘤の部位、患者様のご年齢などを個別に検討し、さらには患者様・ご家族の希望も考慮した上で治療適応の判断をしております。治療適応と判断した場合、治療方法として脳血管内治療と開頭クリッピング術のいずれかを行うという事になりますが、これは脳動脈瘤の部位、大きさ、形状、周囲血管や神経との位置関係などを総合的に判断して決定します。どちらの手術でも治療が可能な脳動脈瘤の場合には双方の利点、欠点をご説明の上、患者様と相談して決定致します。
破裂脳動脈瘤は未破裂脳動脈瘤が不幸にして破裂してしまいくも膜下出血を発症している状態の脳動脈瘤です。多くは救急搬送となりますが、来院時には一旦自然に止血されている事がほとんどです。放置した場合には高い確率で再破裂してしまうため、手術の目的は脳動脈瘤の再破裂予防となります。この場合も脳動脈瘤の部位や形状、大きさなどから開頭術か血管内治療かを判断し、緊急で手術を行います。
血管内手術は、全身麻酔でレントゲン透視下にマイクロカテーテルと呼ばれる先端径が1mmに満たない管を脳動脈瘤内に送り込み行います。プラチナで出来たコイルを動脈瘤内に充填していき、造影剤で脳動脈瘤が写らなくなれば終了です。脳動脈瘤の頸部が広くコイルが安定しない場合には風船の付いたバルーンカテーテルやステントと呼ばれる金属でできたメッシュ状の筒を併用してコイルが母血管に逸脱しないようにします。手術の前後には術中に血栓が過剰に形成されるのを予防する目的で抗血小板剤の内服をして頂きますが、ステントを併用した場合には術後長期間(1〜2年)の内服継続が必要になります。
脳血管内治療が開頭術に勝る点は、開頭が必要でないため低侵襲で術後の体力回復が早く、経過に問題が無ければ早期退院・社会復帰(術後4〜5日で退院、すぐに仕事復帰)が可能であること、開頭術では到達が困難な深部の脳動脈瘤でも到達可能であること、であり、開頭術より劣る点は、脳動脈瘤の入り口を完全に閉鎖する治療では無いために術後の脳動脈瘤再発・再治療の可能性が開頭術に比べて高いこと、であります。術後の再治療の可能性は8〜10%程度あると言われていますが近年のデバイス(コイルやステント)の進化にともなってコイルの充填率は上がっており再治療の可能性は低下してきている印象です。
2)脳動静脈奇形(AVM)
脳組織を栄養する動脈と静脈の間にナイダスと呼ばれる異常な血管の塊を形成する病気を脳動静脈奇形(AVM)と言います。胎児期の血管形成時に起こる異常であり生まれつき持っている先天性疾患でありますが、成長に従ってAVMに流入する血流が増え、導出静脈の拡張や動脈瘤の形成などを伴い、時には脳内出血やけいれん発作などを起こします。無症状で発見されたものであれば治療は行わずに経過観察を行う事もありますが、当院では将来の脳出血を予防する目的で症例毎に治療リスクを検討して方針を決定しています。開頭術による摘出を行えれば根治可能な疾患ですが、摘出術を行う事で重篤な合併症が発生するリスクが高い場合などにはγナイフと呼ばれる放射線治療を選択する事もあります。AVMに対する脳血管内治療の役割は主に摘出術の前に手術時の出血を減らしたり術中の剥離操作を容易にさせる目的で行います。大きなAVMでは数回に分けて脳血管内治療を行い充分に塞栓が出来た時点で摘出術を行います。またγナイフ療法と組み合わせてその効果を最大限に発揮させる目的で脳血管内治療を行う事もあります。当院では国内トップクラスのAVMの症例数を誇っており、同時に行うAVM塞栓術もまた非常に豊富な治療経験を有しています。
塞栓術の方法は、全身麻酔でレントゲン透視下にマイクロカテーテルと呼ばれる先端径が1mmに満たない管をAVMの近傍まで送り込みプラチナ製のコイルや液体塞栓物質(NBCAやonyx)を用いて塞栓を行います。栄養血管の少ない小さなAVMでは一度の脳血管内治療で塞栓を終了しますが、複数の栄養血管を持つ大きなAVMでは一度に沢山の塞栓を行った場合、それまでAVMに流れていた血流が突然正常脳組織に再分布され、けいれん発作や脳出血を起こす事があるため、複数回にわけて塞栓を行います。使用する塞栓物質は主にonyxという液体塞栓物質です。これはマイクロカテーテルから体内に注入し血液に触れるとゆっくりと固まる性質を持つ物質で、使用するに当たって講習受講やonyx指導医の下での研修が義務付けられるなど熟練を要する物質ですが、当院では豊富な経験を持つonyx指導医の適切な判断の下に使用しております。
3)頸部、脳血管狭窄
脳梗塞の原因は様々ですが、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常、喫煙などを原因として頸部動脈、頭蓋内の比較的太い動脈の狭窄が進行し、脳梗塞を起こしてしまう事があります。治療の基本は基礎疾患の厳重な管理と抗血栓療法を基本とした内科的治療ですが、血管狭窄が高度である場合や内科的治療を行っても一時的な脳虚血症状を繰り返す場合には外科的治療の介入が必要となります。
頸部動脈の狭窄の場合、頸部を切開して血管を露出させ肥厚した血管内膜を切除する内膜剥離術(CEA)と、カテーテルを用いて狭窄部分をバルーンカテーテルで拡張させた後にステントを留置する経皮的頸動脈ステント留置術(CAS)があります。CASは局所麻酔で施行可能であり、頸部を切開する必要も無いため身体への負担の小さな治療ですが、肥厚した内膜は切除されないために再狭窄の可能性は少し高くなります。いずれの治療が患者様にとってより効果的であるかは慎重に検討した上で決定します。
頭蓋内血管の狭窄の場合も内科的治療が基本となります。しかし厳重な管理下で内科的治療を行っていても脳虚血症状を繰り返す場合にはバルーンカテーテルやステントを用いた経皮的脳血管形成術を行う事もあります。
4)超急性期脳血栓回収術
脳を栄養する比較的太い中枢側の脳主幹動脈(内頸動脈、中大脳動脈、椎骨動脈、脳底動脈など)が突然閉塞する事によって急激に症状(片側の手足の運動障害、ろれつが回らない、言葉が全く出ない、意識が悪いなど)が進行する脳梗塞の場合、発症からの時間や来院時の検査結果などから血栓溶解療法(rt-PA静注療法)や血栓回収術を行う事で急激な機能予後の改善を得られる場合があります。血栓回収術はその有効性から近年急速に普及してきている治療法で、当院でも積極的に取り組んでおります。対象となるのは重篤な神経症状を呈しておられるにもかかわらず、頭部CTやMRIなどの検査ではまだ広範囲の脳梗塞巣が確認できない方で脳主幹動脈に閉塞を認める患者様です。血栓溶解療法と血栓回収療法を同時に行う事も、それぞれを単独で行う事もあり、それは検査結果などから適切に判断されます。
救急来院され、症状や検査結果から血栓回収療法の適応と判断した場合には急いで血管撮影室に移動して血栓回収術を開始します。局所麻酔下に足の付け根の大腿動脈からカテーテルを血管内に挿入して閉塞部位にデバイス(血栓吸引用カテーテルや血栓回収用ステント)を誘導して血栓を回収し閉塞血管を再開通させます。約80%の確率で有効な再開通が得られます。脳組織が不可逆性のダメージを受ける前に血流を再開通させる事ができれば症状の劇的な改善が期待できますが、既に脳組織が不可逆性のダメージを受けている場合には血流が再開通しても症状が改善しない事もあります。脳組織は血流が途絶えると秒刻みでダメージが進行していきますので1分1秒でも早く治療を行う事が予後の改善に繋がります。
5)硬膜動静脈瘻
脳を包んでいる硬膜と呼ばれる膜上に動脈と静脈の間に瘻孔(シャント)を形成し、圧の高い動脈血が直接静脈内に流れ込むことによって様々な病態を引き起こす比較的稀な疾患です。原因は外傷、開頭術後、炎症、などが上げられていますが、原因不明の場合も多くあります。症状はシャントの形成部位や静脈に流れ込んだ動脈血の流れて行く方向によって多彩ですが、拍動性耳鳴(耳元でドンドンと心拍に一致した音が聞こえる)、眼球結膜の充血・浮腫、ひどくなると脳の静脈還流障害を引き起こし脳浮腫による認知障害などの様々な症状、けいれん、脳出血を起こす事もあります。治療は脳血管内治療でシャント部の閉鎖を行い静脈内に動脈血が流れ込むのを止めます。これもシャント部位や流れ込む血液の流出方向などによって様々な方法がありますが、多くは流入する動脈側と流出する静脈側にそれぞれカテーテルを留置してコイルや液体塞栓物質を用いてシャントの閉塞を目指します。シャント部位にカテーテルの留置が困難で根治的治療が出来ない場合には流入する血流量を下げるに留まる事もや、小さく開頭を行って直接シャント部位を穿刺して閉塞させる事もあります。
6)脳腫瘍
一部の血流豊富な脳腫瘍では摘出術時の出血量の減少を目的に摘出術前に腫瘍栄養血管の塞栓を行う事があります。多くは局所麻酔下に血管内治療を行いますが、腫瘍の存在部位によっては繊細なカテーテルの操作が要求されるために全身麻酔で行わせて頂く事もあります。塞栓物質はコイルや顆粒状の固形塞栓物質、液体塞栓物質を状況に応じて使い分けています。
診療体制表
診療開始-受付終了 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
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午前 9:00~11:30 予約 |
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午後 13:30~16:30 予約 |
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木本 敦史 (予約のみ) |
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代診・休診のお知らせ
お問い合わせ
電話でのお問い合わせは平日 午後1時30分~3時30分の間にTEL:098-853-1200(代表)にて受け付けております。
医師の学会出張や業務の都合による急な休診・代診が発生する場合がございます。
医師の学会出張や業務の都合による急な休診・代診が発生する場合がございます。
医師紹介
脳血管センター長
木本 敦史
Atsushi Kimoto
- 出身校(卒年)近畿大学(1996年卒)
- 専門分野脳血管内治療 / 一般脳神経外科
- 資格日本脳神経外科学会専門医
日本脳血管内治療学会専門医 - 所属学会日本脳神経外科学会
日本脳血管内治療学会
日本脳神経外科コングレス
日本脳卒中の外科学会
日本脳卒中学会、日本頸部脳血管治療学会
日本脳神経外科救急学会