心臓血管外科
心臓血管外科の概要
-
沖縄協同病院心臓血管外科は1983年に開設され、長崎大学心臓血管外科との関連施設として現在まで多くの手術を行ってきました。2013年以降は長崎大学との連携を強化したため症例数が増加し、ここ数年では年間60−70例程度の心臓手術と、100例程度の末梢血管手術を行っています。
冠動脈疾患に対しては心臓を止めずに行う心拍動下冠動脈バイパス手術を、弁膜症に対しては右開胸小切開手術で自己弁を温存する弁形成術を積極的に取り入れています。大動脈瘤に対しては血管内治療としてステントグラフト手術を行っています。また2017年から下肢静脈瘤に対してレーザー血管内焼灼術を開始しました。いずれの手術も低侵襲を目的とし、患者さんが早期に社会復帰ができるよう、日々工夫を行っています。
扱っている疾患および治療方法
冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)
心臓を栄養している冠動脈という血管に狭窄(せまいところ)や閉塞(つまってしまう)がおこったために、心臓へ流れる血液が足りなくなってしまい、胸痛が出現する病気を狭心症といいます。そしてさらに進行し、心臓の筋肉の壊死が起こってしまうと心筋梗塞といいます。心筋梗塞がさらに進行すると、心不全や不整脈がおこりやすくなり、突然死の可能性もあります。
原因としては、加齢や高血圧、糖尿病、喫煙などに関連する動脈硬化性のものが多く、血管の壁がコレステロールやカルシウムの沈着することで血管が狭窄します。
治療としては以下の方法があります。
薬物療法 | 血液をサラサラにする薬、血管を拡げる薬 |
カテーテル治療 | 風船治療やステント治療 |
冠動脈バイパス手術 | 自分の別の部位の血管(肋骨の内側や胃の周りの動脈、足の静脈など)を 心臓の周りの冠動脈につなげて血液を流れるようにする。 |
冠動脈バイパス手術の適応 | 3枝病変、高度な2枝病変 左室前下行枝主幹部病変 ステント治療が困難な症例 低左心機能、糖尿病合併症例 |
弁膜症(大動脈弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症など)
○大動脈弁狭窄症
大動脈弁とは、左心室と大動脈の間にある弁で、左心室からの出口にあたります。大動脈弁狭窄症はこの弁が硬くなり動きが悪くなる病気で、主に動脈硬化が原因です。大動脈弁に狭窄が生じると、左心室から大動脈へうまく血液が流れず、左心室には強い負担がかかり心臓は徐々に肥大していきます。左心室への負担が進行すると、左心室の機能が低下し、不整脈や心不全を起こすようになります。左心室の機能が低下する前に手術をする方が、術後の成績が良いことが分かっています。
大動脈弁の手術には①弁置換術、②弁形成術があります。
弁形成術は、人工弁を使用しなくてもよいという利点がある一方、硬くなった弁を形成して完全に漏れを防ぐのは技術的にも難しく、術後に再発する可能性もあるので、一般的には行われていません。
当院では傷んだ弁を切り取り、人工弁に取り替える弁置換術を行っています。
○僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁は、左心房と左心室の間にある弁で、左心室からの逆流を防ぐ役割があります。僧帽弁閉鎖不全症はこの弁に漏れがある病気で、原因としては、一般的には①リウマチなどによる炎症、②加齢などによる変性、腱索の断裂、③心筋梗塞や心筋症、④感染性心内膜炎、等があります。
僧帽弁に漏れが生じると、左心室から左心房へ血液が逆流し、心臓に強い負担がかかります。このため、左心室が徐々に拡大し、心機能は低下します。病気が進行すると、息切れ、呼吸困難などの症状が出現し、不整脈(心房細動)や心不全を引き起こします。このため、逆流量が多い場合には手術適応があります。
僧帽弁閉鎖不全症の手術には①弁形成術、②弁置換術があります。
弁形成術は、自己弁を修復して逆流を直すという手術です。慢性期のワーファリン内服が不要なことや、人工弁関連合併症から解放されるという利点があります。その一方で、手術後に逆流が再発し、再手術が必要となる可能性もあります。僧帽弁を直接観察し、可能であれば弁形成を行います。当院では僧帽弁閉鎖不全症の約95%に弁形成術を行っています。
1. 機械弁 | ・耐久性に優れている。 ・血栓が付きやすいため、ワーファリン(血液をサラサラにする薬)を飲まなければならない。 ・定期的に通院して、ワーファリンの利き具合の検査(採血)を受けなければならない。 |
2. 生体弁 | ・ウシやブタの心膜でできた弁。 ・術後3カ月の時点で、ワーファリンを中止できる。 ・耐久性が劣る。(15年程度で生体弁自体が劣化し、逆流が再発しうる) |
以上を勘案し、弁形成術ができる場合は形成術を積極的に取り入れ、弁置換術の場合は機械弁か生体弁どちらを入れるかを患者さんとよく相談して決定しています。
大動脈瘤(胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤)
大動脈瘤とは胸部や腹部の太い血管にできた病的なコブのことです。加齢や高血圧、糖尿病、高脂血症等による動脈硬化性変化のため、動脈壁が脆弱化することで瘤化が起ります。一旦拡大した瘤が縮小することはなく、徐々に拡大を続けます。ある程度の大きさに拡大すると破裂し、大出血をおこしてショック状態となります。破裂する前に予防的に外科的治療を行うことが重要です。統計的に胸部で55㎜、腹部で45mmを超えると破裂する危険性が無視できないレベルになるので、手術適応と判断します。またそれ未満の場合でも、囊状瘤や急速拡大傾向の場合も破裂のリスクとなるため手術適応となります。
ステントグラフト内挿術
胸部や腹部の大動脈瘤の治療は、以前は開胸または開腹下での人工血管置換術が主でした。ここ数年、ステントグラフトを用いた血管内治療が可能となり、より低侵襲での治療が実現しています。特に胸部大動脈瘤に関しては、人工血管置換術の場合は人工心肺を用いる必要がありましたが、ステントグラフト治療によってその必要も無く、入院期間、合併症発生率が大幅に減少しました。比較的新しい治療ですので術後は造影CTで1年毎の定期的な経過観察を行っています。
バスキュラーアクセス手術
自己血管を用いた透析用シャント手術を始め、人工血管を用いたシャント手術や、急性動脈閉塞やシャント狭窄に対するPTA(経皮的血管形成術)も積極的に行っております。
下肢静脈瘤
下肢の静脈には重力に対抗して心臓に血液を運ぶために、数センチごとに弁があります。その弁の機能不全が起こり、血液がうまく心臓に戻らなくなる病気を下肢静脈瘤といいます。ふくらはぎの辺りにに血管が浮き出てきたり、溜まった老廃物のためにむくみ、こむらがえり、つり、かゆみなどの症状を伴います。
下肢静脈瘤レーザー血管内焼灼
以前は悪くなった静脈を全て取り去る手術を行っていたため術後の疼痛と3−5日程度の入院が必要でしたが、最近になって血管内をレーザーで焼き切る手術が可能となり、疼痛が少なく1泊の入院で治療が行えるようになりました。
緊急手術
急性大動脈解離、 大動脈瘤破裂 、下肢急性動脈閉塞症、急性心筋梗塞、急性発症の弁膜症、感染性心内膜炎に対して24時間対応で手術を行っています。
その他
その他、心臓腫瘍、成人先天性心疾患(心房中隔欠損症など)、不整脈(心房細動、心室頻拍)、収縮性心膜炎、心筋症に対しての手術も行っています。
手術症例数(2013年~2019年)
診療体制表
診療開始 │ 受付終了 |
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
午前 | 9:00 │ 12:00 |
予約 | [手術(開心術)] | ー | [手術(開心術)] | 東理人 [静脈瘤外来] |
橋本亘 東理人 |
ー |
医師紹介
医師名 | 専門分野 |
---|---|
橋本 亘 | 成人心臓外科、大血管外科 |
東 理人 | 成人心臓外科、大血管外科、末梢血管外科 |